Walther Horn とハンミョウ

 Walther Horn (1871-1939) は、ハンミョウ類(オサムシ科ハンミョウ亜科)の分類の基礎を築いた研究者として、また、1863年までの昆虫学関係の文献を集成した Index Litteraturae Entomologicae(4巻。1928-29年刊。S. Schenkling との共著。2000年に復刻版が出た)や世界の主要な昆虫コレクション・昆虫学者を集成した Entomologische Sammlungen, Entomologen und Entomo-Museologie(3分冊。1935-37年刊。I. Kahle との共著)の著者としても知られる碩学である。
 生涯に390編の論文・著書を残したが、そのうち284編がハンミョウに関するものである。ハンミョウ類は、2004年の時点で、2559種が知られているが、そのうちの実に5分の1以上が Walther Horn によって記載されたものである(D. L. Pearson and F. Cassola, Coleopterists Bulletin 59(2): 184-193, 2005)。

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Walther Horn (1871-1939)

Arb. morph. Taxon. Ent. Berlin-Dahlem 6 (3), Tafel 10, 1939.
に掲載された肖像写真。

 Walther Horn は、日本のハンミョウのうち、リュウキュウヒメハンミョウ、ヨドシロヘリハンミョウ、カワラハンミョウ(白色部が減退した [= 黒化した] 個体)を記載している。

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Genera Insectorum 82c, Tafel 19 (1915) に図示されたカワラハンミョウ

はじめ、Deutsch. Ent. Zeit. 1895, p. 91 (1895) において、横浜産の標本に基づいて Cicindela laetescripta Mtsch. var. circumpicta W. Horn として記載されたが、circumpicta が先取された名であったため、後になって(Ent. Beihefte, Berlin-Dahlem 5, p. 48, 1938)、Walther Horn 自身によって、circumpictula と改名された。

 同じ傾向の斑紋をもつ滋賀県産のカワラハンミョウの生態写真は こちら

 私の手元には、アメリカ自然史博物館のタマムシ科の研究者 A. S. Nicolay が Walther Horn から購入した別刷を4冊に製本したものがある。これには、1936年2月3日から7月18日までの日付の Nicolay 宛の10通の手紙や、Horn 家からの訃報、H. Sachtleben による追悼記事(上の肖像写真はこれから取った)が一緒に綴じ込まれている。もとは、オーストラリアのタマムシ研究家 Stanley G. Watkins 氏の旧蔵書だったものを、縁あってオーストラリアの古書店から入手したものである。
 このほか、H. Roeschke との共著 Monographie der paläarktischen Cicindelen(1891)や、Genera Insectorum 82巻(1908, 1910, 1915)、Coleopterorum Catalogus 86巻(1926)(イギリスの膜翅目の研究者 Donald Burton Baker の旧蔵書をイギリスの古書肆から入手)といった著書が手元にあり、ときおり利用している。

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